書評者と著者と読者の本屋「松原商會」@PASSAGE by ALL REVIEWS のBlog

社会経済学者・松原隆一郎(放送大学教授、東京大学名誉教授)と丁稚が営む、書評と書評された本と読者をつなぐ一棚書店

#18 「YouTubeや本で地名を出すか、出さないか問題」について吉川祐介さんに聞きました/『限界ニュータウン』著者・吉川祐介さん、いらっしゃい【4/全11回】

吉川祐介さんのYouTubeチャンネル「資産価値ZERO -限界ニュータウン探訪記-」のスクリーンショット

限界ニュータウン』著者・吉川祐介さんの「限界ニュータウン」についての発信は、ブログ「URBANSPRAWL-限界ニュータウン探訪記-」から始まり、ファンがどんどん増え、その後スタートなさったYouTubeチャンネル「資産価値ZERO-限界ニュータウン探訪記」も大人気です。

それにしても、個人でブログやYouTubeを運営していると、大変なこともあるはず…。今回は、そんなお話を、松原隆一郎會長(&丁稚)から吉川さんにお聞きしました。

會長 ブログって、自虐で書いても批判が来るじゃないですか。吉川さんのブログだと「俺が住んでるところ何もないみたいに書くな」というようなコメント来ませんか(笑)?

【吉川さんのブログはこちら ↓ 】

urbansprawl.net

吉川 来ましたね、何度か。

會長 大変ですね。でも物書きをやっていると、ついつい刺激的なことを書きたくなる。自虐のつもりで書いても、「やばいかなぁ」ってあとで心配になる。良心的な編集者はそういうときに話し相手になってくれるけど、吉川さんのブログは一人でやっておられる。大変でしょう。

丁稚 先日(注:対談は3月26日に行われました)、YouTubeチャンネルの売却をアナウンスなさってましたが、何かあったんですか?

吉川祐介さん(右)と、松原商會・松原隆一郎會長(左)

吉川 それは全然別のことで 。YouTubeも、仕事になってしまった以上は続けざるをえないんですけど、今住んでいる分譲地を出ようかと考えるような私生活上のトラブルがあったのです。でもそうなると、YouTubeでやろうと思っていた企画も続けるのが難しい。とは言っても僕の仕事は動画だけでもないので、チャンネルを売却して生活費に充てようと考えたのです。

結局、近所の方も、思いとどまるように言ってくださったり、そもそもほかに住みたいと思うような場所もなかったりで、その話は取り下げました。

會長 気を取り直してもう一回、仕切り直しで。

吉川 話を戻しますと、クレームなどが来ても、それがあまり筋が通っていなかったり、明確に僕のポリシーに反している場合は反論することもあります。

消したことは、一回だけあります。群馬県の別荘地の管理組合から写真の掲載についてクレームがきたことがあって、それは別に意地を張るほど重要な写真でもなかったので素直に従い、取り下げました。

お菓子を選ぶ吉川祐介さんのレアショット!吉川さんが選んだのは、神保町にあるポルトガルのお菓子屋さん「DOCE ESPIGA」さんの「リス川のそよ風」というお菓子

地名は出さない。でも、結局…

會長 僕、今、放送大学で教えていて、放送授業を作っているんですが、版権はすごくうるさい。放送大学は、今は私学ですが、事務方の感覚は官庁に近い。元々、総務省文科省が作った公的な大学だったので、許諾を取得することが徹底されています。

吉川 地名については、この本『限界ニュータウン』でも、楽待不動産投資新聞でも、絶対に出さないのがルールでした。

會長 やっぱり。ブログを拝見して「刺激的だけど本にするのはなかなか大変だな」と思っていました。本を拝読すると具体名は消しておられましたね。

吉川 本の方針は、分譲地の個別の紹介というより、そこに暮らす感覚のようなものをメインに打ち出したいというものだったので、あまり地名は重要ではなかったんです。

會長 読む側としては、内容が面白ければ実際に行って歩いてみたいから、地名を知りたいじゃないですか(笑)。

吉川 でも、地名を隠しても、結局すぐばれるんですよ。楽待不動産投資新聞のチャンネルに出た動画も、楽待さんが「地名は出さないようにしましょう」とモザイクをかけても、公開したその日のうちにコメント欄に場所が書かれいました。見ればすぐにわかるので。

會長 見つけ出した人って、どこかに書きたがるから(笑)。

吉川 楽待のも、僕が楽待の方に「これ、モザイクかけても見てる人はわかると思いますよ」って伝えたうえで公開されました。会社としては地名は明かさないという方針をとりますが、それを調べるのは視聴者の自由ということですね。

會長 会社は、ちゃんと分からないようにしたという建前が必要なんでしょう。

かつての色街や青線地帯みたいなところを歩くYouTubeチャンネルがあるけど、結局、どこかわかる。視聴者は実際に行きたい、がホンネですから。ああいうエリアは建物もおもしろいし。大阪の飛田なんか、大正時代あたりの不思議な建物が残っていて、建築学者もツアーで見学に行くらしいです。

吉川 私の場合、正直、たとえ地名を書いても、それで実際に見に行く人がいるとは思っていなかったのです。

もともと私のブログは、千葉県の成田空港の周辺で土地を買った人とか、そこに住むことがすでに決まっている人たち向けに書いてたので、地名も躊躇なくバンバン出していました。

県外の人が読んでも、どこかわからないようなローカルな地名ばかり出てきますが、私はそもそも自分のブログを、千葉県外の人が読むことを想定していなかったんです。

丁稚 會長は、自分で現地に行って感触をつかまないと書評を書けないから、って、八街市に出かけて行って、タクシーであちこち廻って見てきたんだそうです。會長が撮ってきた写真をいっぱい見せてもらいました!

會長が撮影した八街市の光景

次回は、吉川さんの圧巻の調査方法を、會長と丁稚がここぞとばかりに教えてもらいます!