松原隆一郎會長、今日もキコキコ自転車で松原商會にご出勤。
會長「おはよう、丁稚。お客さんは来たかい?」
丁稚「會長、おはようございます。モグモグ。お店のお客さんはいつも通り来ませんが、會長のお客さんがいらっしゃいました。モグモグ。」
會長「お客さんって誰? 丁稚、何食べてるの?」
丁稚「會長が共著者の一人として書いた『アントニオ猪木とは何だったのか』の出版社の方が来られたので、さゝまさんに急いでお菓子を買いに行ってお出ししたんです。しばらくお待ちだったんですけど、さっき帰られました。」
丁稚「夏のお菓子、どれもきれいで迷ったんですけど、見てるだけで涼しくなる『みぞれ羹』を買ってきました。…… おいちー。」
會長「お客さんが来ると、自分が食べたいからってすぐ、さゝまさんにお菓子を買いに行くんだから……。でも、PASSAGEの松原商會から歩いて5分のところに和菓子の老舗があるのは、神保町に店を構えた幸せの一つだね。」
丁稚「會長の分ももちろんありますよ。お茶淹れますね。コポコポ。ところで『アントニオ猪木とは何だったのか』は、いつ発売なんですか?」
會長「モグモグ。おいちー。…… たしか、9月15日だよ。」
丁稚「共著者のみなさんが錚々たる方々ですね。入不二基義さん、香山リカさん、水道橋博士、ターザン山本さん、夢枕獏さん、吉田 豪さん…(50音順)。」
會長「こうした人たちに共著を依頼できる編集者はそうそういないよ。」
丁稚「共著者のお一人である〇〇さんと會長の対談を聞いてみたい、って出版社の方にお話したら、『いいですね、やりましょう』って賛成してくださいました。」
會長「ぜひ。僕もうれしい機会だな。〇〇さんとはきっと深い話になると思うよ。」
丁稚「わーい!じゃあ、出版社の方と一緒にがんばって準備します!
アントニオ猪木のことさっそく学ばなきゃと思って、出版社の方に入門書的な本をおたずねしたら、アントニオ猪木の自伝をすすめてくださいました。
會長「不思議な逸話が印象に残っている自伝だ。
『(自宅に招いて人参ジュースを飲ませてくれたモンゴリアン・ストンパーの)気持が嬉しくて、私はジョッキで六杯飲んだ。
そうしたら---翌日から異変が起きたのである。ムスコが元気になってしまい、三日三晩立ちっぱなしになってしまったのだ。これには困った。試合のときも一向に衰えないのである』」
丁稚「不思議な不思議さですね。」
會長「そういえば、新宿のデパートで開催されているアントニオ猪木展、今日が最終日だよ。丁稚、勉強のために行ってきなさい。」
丁稚「はいっ!」
丁稚、シュバッと新宿へ。
会場は新宿西口の京王百貨店。京王百貨店に行ったことがない丁稚は、立ち止まっては路上の新宿案内地図を見て探すのですが、お店の名前が書き込まれてないんですね。何のための地図かわかんないな、と首をかしげながら、いつもより人込みが少しおとなしいお盆の新宿西口を歩き回ってるうちに、閉場時間の17時まであと30分に!
見たことない京王百貨店をどう見つければいいのかわからないでいると、青い軒先テントに京王百貨店の文字が。ここだ!
インフォメーションで「アントニオ猪木展はどこですか!」と元気よく質問して、Diorの脇のエスカレーターで地下にするする降りていくと
「1、2,3,ダーッ!」
というかけ声が聞こえてきました。
たどり着いた会場は丁稚の予想の10倍ちっちゃい!
でも、会場の空気は予想の10倍熱い!
お盆休みとあって、お子さん連れのご家族やご夫婦も多く、そこに、いかにも格闘技をなさっているかんじの方、一人で黙々と展示を回っている男性の方、いろんな人が、ちっちゃな会場の中で、思い思いにアントニオ猪木の雄姿に見入ってます。
今日は8月15日。猪木展の様子を眺めながら、丁稚は平和のありがたさを深く感じました。
「あと30分で閉場でーす。ぜひご覧ください!」「1、2,3,ダーッ!」と、それぞれに叫んでるスタッフの方々の脇をすりぬけて、本日勉強に来た丁稚は、まず、アントニオ猪木の年表を探すと……
ない!
猪木のことわかってるのが前提の展覧会なんだ……丁稚は緊張しながら展示を廻り始めました。
まず、猪木がプロレスを始めた頃の写真。
猪木が力道山に教えてもらってる!
「リキ・スポーツバレス」は、名前の通り、力道山が作った巨大なスポーツ娯楽施設。渋谷駅南口を出て坂を上っていき、今はヒューマックス渋谷ビルが建つところにあったそうです。1992年に解体されました。渋谷にそんな施設があったのですね。
「お父さん!モハメド・アリの身長は〇〇センチだった、ってアナウンスで言ってるよ!」と、盛り上がるご夫婦。
「1,2,3。ダーッ」をするために順番待ちをして、うれしそうにリングに上がっていくスーツ姿の男性。
会場にいる人みんなが「子どもの顔」になっていて、元気で純粋な空気が会場を包んでいました。
「闘魂!」と書かれた会場をほっこり気分であとにした丁稚。
エスカレーターを上がると、来るときは慌てていて気づかなかった猪木が。
ここで立ち止まる人は、みんなやっぱり「子どもの顔」に。
猪木についての知識はあまり増えませんでしたが、猪木がたくさんの人に愛されていたことはすごくよくわかった展覧会でした。
こんなに愛されてるアントニオ猪木ってどんな人だったんだろう……丁稚は、俄然気になり始めました。
『アントニオ猪木とは何だったのか』を読んだら、深くわかりそう。
そして、これは何が何でも、共著者の〇〇さんと會長の対談を聞かねば。
丁稚は、「1,2,3、ダーッ」と心の中で叫びながら、新宿紀伊國屋書店で猪木自伝を買って、會長が店番をしてくれている松原商會に帰りました。
(松原商會が路面店という設定はフィクションです。)